2013.09.30.Mon
428~封鎖された渋谷で~ PSP版 感想
Spike The Best 428 ~封鎖された渋谷で~
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スパイク (2010-12-02)
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4月28日、午前10時。渋谷中央署の新米刑事、加納慎也はスクランブル交差点にいた。
渋谷管内で誘拐事件が発生し、犯人は被害者の妹、大沢ひとみに現金を持たせるよう指示。
加納は先輩刑事の笹山と共に、身代金引き渡し現場に張り込んでいるのだ。
配属後、初めての大事件捜査に緊張する加納。
彼はまだ、事件の裏に自分の想像を遥かに超える陰謀が隠されていることを知らない。
同じ頃、遠藤亜智は日課のゴミ広いに精を出していた。
途中、女性に絡むスカウトをあしらったりしながら渋谷駅前まで来た亜智は、
ハチ公前に佇む一人の少女を目にした。
好みのタイプであったため、思わず見とれてしまう亜智。突如目の前で起きる事件。
少女に向けられた銃口。身の危険を察した亜智は咄嗟に飛び出し、少女をかばい逃走する。
事件捜査に奔走する加納。少女と行動を共にする内に徐々に事件に関わっていく亜智。
二人の青年を中心にフリーライターの御法川実、被害者の父である大沢賢治、
謎の着ぐるみタマの物語が複雑に絡みつつ、渋谷の街は今、騒乱の渦に包まれようとしていた。
(wikipediaから引用)
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2008年12月4日にセガより発売されたWii用サウンドノベルゲームの移植版。
一般ゲーで良いADVゲームっぽいものはないかなあ(いっぱいあるんだけど)って感じで探しつつ、そういえばこれがあったな、と。TVCMは前身である「街」の印象が強いのですが。それはおいおいやるとして。
このゲームでは5人の登場人物の物語を操作しつつ、それぞれの行動が影響しあいます。例えばAさんが右行くか左行くかでBさんが死ぬか生きるか左右される……という。で、バッドEDにたどり着くと「Aさんの行動を変えればBさんの運命が変わるよ!」と、結構具体的なヒントが示されるので、そこを直して進めていけばOK。
シナリオは1時間ごとに進み、選択肢も多く、死んじゃったり一攫千金狙ったり、理不尽なんだかコミカルなんだかよくわからないバッドEDだらけ。5分~30分刻みで進むシナリオをチマチマチマチマ進めバッドEDを避けハッピーEDを目指します。フツーに読み進めているとバッドEDに行きますので個々のシナリオをかなり行き来する。ですがタイムチャートが視覚的に確認できますので、過去のシナリオから簡単にやり直せます。
KEEP OUT、JUMPというシステムがあり、Aさんのシナリオがある程度まで進むと行き止まり(KEEP OUT)、BさんのシナリオからAさんのシナリオにジャンプ(JUMP)してくることが可能。というように、読むだけゲーにならない爽快感も用意されています。
最近の(?)ADVゲームに慣れていると5分刻みのシナリオでバッドEDに行ったりすると先に進まない~みたいな気持ちに最初はなりますが、自分の操作次第で誰かが助かったり話が進んだりするのは結構気持ちが良くなります。
この作品は10:00~20:00の、たった10時間の物語です。にも関わらず濃い。非常に濃い。5人分(のちのち増える)のシナリオを読んでいるせいか「たった一日でどんだけドラマしてるんじゃー」となります。
一般向けのエンタメサスペンスコメディミステリ(踊る大捜査線風味?)という感じ。一昔まえの邦画作品のような楽しさで、奇抜さはない王道を貫きながら胸熱な展開が人を選ばない作風となっています。ゲームジャケットを見て分かる通り画面の中身は実写になり、女優・俳優が演じています。ほとんど静止画でたまに動画、声がないのが最初ちょっと寂しい気がしますが、なくて良いのかな、という気もします(俳優の声あて、というのは声優の声あてに慣れた自分にはちときつそうだし)
オタク向け臭がほとんどしないためか(笑)、名作がやりたい一般ゲーマーにまで浸透はしていそう。
タイトルの通り渋谷を舞台にしていますので知っていれば「ああ、ここか」的な気分になれます。
で、一週しカナン編が終わりました。あとバッドED回収とかあるんですがひとまずこれにて終了ですので感想を簡単に。
●個々シナリオ
登場人物が山のように出てきますので、各シナリオごとにさらっと。
・加納慎也(かのう しんや)
新米刑事加納くんは婚約相手の留美さん……というよりお父さんに対しての部分がひっかかりまくっていましたが(笑)、良い感じの刑事ドラマでしたね爽やかすぎる。
刑事ドラマの理想のようなスタンダードさでした。ジャックとの関係は萌えますね。
・遠藤亜智(えんどう あち)
渋谷の元チーマー(?)かと思いきや渋谷を愛しすぎてしまい日々ゴミ拾いをする無職青年。あれこれといいヤツすぎる。お嬢様との恋愛もベタすぎますがメインシナリオとしては相応しいんだろうなあという感じです。しかし彼のお父さんが黒幕の一部ってのは意表を突かれましたね。
・大沢賢治(おおさわ けんじ)
ほとんど家の中から出ないで終わり、シナリオのほとんどが独白と過去回想なので、5人の中では異色のシナリオのような。彼のシナリオをやる時は結構気が重かったです。ですが一番真相に近いのでしょうか、面白くプレイできました。
・御法川実(みのりかわ みのる)
一番好きなシナリオでした。熱血すぎるライターミノさんの体当たりすぎる取材に、周囲が引っ掻き回されつつも心を動かされるという内容でした。
色々とくさい面もありますが、むしろそれがしっくりきましたね。しかし頭山さんの自殺を何度も見るのはしんどかったw
・タマ
猫の着ぐるみに入りっぱなしのタマ可愛いですね。正体がわからなかった頃のほうが良かったでしょうか。割とすぐ中身を出してくれちゃいますけれど。
とにかく緊張感に欠けるシナリオが和みます。それもこれもメインキャラ(柳下社長・チリさん)が色々と強烈だったからかな。
という訳で総じて爽やかでしたね。最終章で428を舞台にしたハートフルヒューマンドラマは終わります。
ですが、黒幕が実は……?というところでNEVER END。これの続きはテレビアニメ「CANNAN」になるのでしょうか。
428の空気が好きな方はここで終わらせ、毛色が違ってもその先が気になる!という方は「CANNAN」を見るのが良いのかな?
●ボーナスシナリオ:カナン編
2009年に放映していたテレビアニメ「CANNAN」の主人公がこのカナンということに気づくのはwikipedia見てからでした。
タマことマリアの友達として名前だけ登場したカナンのシナリオは、ある条件を満たしクリアしたあとに解放されます。なるほど確かにクリアして読むべきシナリオな気がしますが、これは、本編の余韻が吹っ飛ぶ内容ですね!!
これは蛇足であるとかつまらない必要ないという評価は知っていたのですが、私は概ね楽しめてしまいました。今プレイしているADVゲームよりクオリティ高い部分もありますし、個性も強いし、変に説得力があります。ですが、確かにこれは428の世界観と共通していても雰囲気はブチ壊してしまうので、勿体ないような気がしました。作品そのものはいいのに酷評で可哀想な感じ。
カナン編ではマリアの元に向かうカナンがアルファルドとの出会いを思い返す、という内容なので、カナンの生い立ちから師匠であるシャムについてや、カナンがいかにしてあのようなハイパー設定を持っているのかがアルファルドとの対決から説明してもらえるのですが、舞台が中東・アニメーション絵・列車を舞台にした傭兵バトル、何より奈須きのこ氏のあの文章なので、邦画のような428の雰囲気とはかなりかけ離れているんですよね。なんか、踊る大捜査線の中で聖杯戦争がはじまっちゃったようなwwてのは言い過ぎですが、そんな感じ。
たくさんの人々の思惑が絡み合いほっとするヒューマンドラマで終わった428が突然超人異能バトルっぽくなってしまうので(カナンの共感覚のせいですが)、余韻が飛ぶ飛ぶ。これ何のゲームだったっけてなっちゃいました。シナリオはカナンが空港に到着する所で終わり、EDロールでは428メインテーマが使われて気遣いは感じますが、それでは誤魔化しきれない個性の強さがあります。クオリティがそこそこ高いだけ、余計に。
ですが余韻どうこうを抜かせば、奈須きのこ氏の個性的な筆力や豊富なイラスト、退屈させないよう頑張りまくりアニメのようになった演出の細かさ、ややオタク向けですが心地いいBGMに酔いしれて、「面白いADVだなー」で終われました。「カナンとアルファルドは兄弟弟子の関係でした」をあそこまで勿体つけてカッチョ良く表現できるのはTYPE-MOON製作だからですかね(笑)私はふつうに「すごーい」と感心するだけでした。
ですが、人は選びます……!428の雰囲気を壊したくない方は、確かにやらないほうがいいかも。そこはそれと割り切れちゃうならばやってみたほうが良いです。ちゃんと関連性ありますので。
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